「社内文書は一歩も外へ出さない」を標準メニューにする──デージーネットが、Ollama・Dify・Fessで組む社内AI基盤を140万円台から売り始めた
OSS専門のデージーネットが、ローカルLLMで社内文書を外に出さず処理する「社内AI基盤構築サービス」を8月26日に開始。Ollama・Dify・Fessで組むRAG構成と、140万円台からの料金、そして導入前に見ておくべき死角を整理します。
クラウド型の生成AIは便利ですが、社内の設計書や顧客情報を入力欄に貼り付ける瞬間、そのデータは自社の外へ出ていきます。この「外に出したくない」という一点で導入を止めていた企業に向けて、OSS専門のIT企業・株式会社デージーネット(名古屋市、TOKYO PRO Market上場・証券コード371A)が、2026年8月26日に「社内AI基盤構築サービス」の提供を始めました。特徴は、ローカルLLMを使い、データを外部のクラウドへ送らずに社内で処理し切る点にあります。
「試作」でとどまっていた社内AIを、構成込みで引き受ける
ローカルLLMで社内AIを作る手順そのものは、これまでも技術記事として数多く出回っていました。しかし実運用に載せるには、どのモデルを選ぶか、サーバをどう組むか、社内文書をどう検索させるか、誰がどう運用するか、といった判断が積み重なります。今回のサービスは、この一連の設計をまとめて請け負う形をとります。具体的には、次の工程を業務内容やセキュリティ要件に合わせて手がけると説明されています。
- LLMの選定とサーバ構成の設計
- セキュリティ設計
- ナレッジベース(社内文書)の作成・整備
- プロンプト設計
- 運用ルールの整備
言い換えれば、モデルを動かすところではなく、「社内で回り続ける状態にする」ところまでを商品にしています。生成AIの内製を模索してきた企業にとっては、つまずきやすい設計と運用の部分を外注できる選択肢になります。
三つのOSSで「検索して、答える」をつなぐ
基盤は、いずれもオープンソースの三つの部品で組まれます。役割を分けると次のようになります。
- Ollama:ローカル環境でLLMを実行・管理する土台
- Dify:LLMを使ったアプリケーションを開発・運用するプラットフォーム
- Fess:社内文書を全文検索できるようにするための検索エンジン
この組み合わせは、社内文書を検索してから答えさせる、いわゆるRAG(検索拡張生成)の構成にあたります。モデルに社内文書を丸ごと覚えさせるのではなく、質問のたびに関連文書を探し出し、その内容をふまえて回答させる作りです。想定される使い方として、社内FAQや問い合わせ対応の自動化、社内文書の高速な検索・要約・比較、ワークフローと連携した業務効率化が挙げられています。マニュアルや設計書を参照させる用途を、外部のAPIに頼らず自社内で完結させられるのが要点です。
二つの構成と、その値札
提供されるのは、アプリ開発基盤まで含む「Dify方式」と、より小さく始める「Ollama方式」の二つです。公表されている費用は次のとおりです(いずれもハードウェアは別。金額はデージーネットの発表による)。
| 構成 | 構築費用 | 保守費用(年額) |
|---|---|---|
| Dify方式 | 1,470,000円~ | 323,000円~ |
| Ollama方式 | 1,040,000円~ | 262,000円~ |
初期費用が百万円を超える点だけを見ると割高に映りますが、比較の相手はクラウドAPIの従量課金です。使うほど積み上がる変動費を、自社設備の固定費へ置き換えるという考え方になります。利用量が多く、かつ機密性の高い文書を継続的に扱う組織ほど、この置き換えは計算が合いやすくなります。逆に、たまにしか使わない用途であれば、固定費と保守費のほうが重くのしかかります。
「安全だから」で決める前に見ておきたい死角
データを外に出さない構成は、機密情報の保護という一点では強い安心材料です。一方で、便利さの裏にいくつかの負担も指摘できます。第一に、性能面の割り切りです。手元で動かせる規模のモデルは、最新のクラウド上位モデルと同等の回答品質を常に出せるとは限らず、用途を絞った運用が前提になります。第二に、費用はソフトウェアの構築・保守費だけでは終わらず、GPUを含むハードウェアの購入と、その後の電力・更新・故障対応が自社側に残ります。第三に、モデルの更新やセキュリティ対応を誰が続けるのか、という運用の担い手の問題です。「入れて終わり」にはならず、社内に運用の知見をためていく覚悟が要ります。導入を検討する際は、守りたい情報の範囲と想定利用量を先に見積もり、クラウドAPIを使った場合の年間費用と並べて比べておくと、判断を誤りにくくなります。
それでも、こうした「社内で完結するAI」を、試作ではなく標準メニューとして値札つきで提示するベンダーが現れたことは、生成AIの内製が実務の選択肢に入ってきた兆候と言えます。クラウドか、自社内か。その二択を、コストとセキュリティの両面から具体的に検討できる材料が一つ増えました。