毎日『改善』か『全員リセット』か──OpenAIがCodexに自ら課した28日間の公開ノルマ
OpenAIのCodex責任者が『28日間、毎日ユーザーに効く改善を1つ出すか、全員の利用上限をリセットするか』を公約。初日は生成速度を約1.5倍に。狙いと、ギャンブル化との批判までを整理します。
「毎日どちらかを必ず出す」とCodex責任者が宣言した
OpenAIでCodexとChatGPT Workの開発を率いるThibault(通称Tibo)Sottiaux氏が、10月上旬にXで異例の公約を掲げました。向こう28日間、チームは毎日「ほとんどのCodex/Workユーザーにとって明確な改善となるもの」を1つ出すか、さもなければ全加入者に利用上限の『フルリセット』を配る、という内容です。
期間は2026年10月5日から11月1日までの28日間です。中間はありません。『出したが大して役に立たない』ものに部分点はなく、価値ある改善かリセットかの二択を毎日迫られます。
毎日の二択と、絞り込んだ4つの注力領域
公約の構造はシンプルです。チームは毎日、次のいずれかを選びます。
- 改善を1つ出す: 多くのユーザーに効く、明確な前進であること。
- フルリセットを配る: 改善が間に合わない日は、全加入者の利用上限をリセットする。
あわせてTibo氏は、この期間の作業を4つの領域に絞ると述べています。
- 製品の単純化(simplifications)
- 同じ枠でより多く使えるようにする効率化
- 画期的な新機能
- 新しいモデル
初日は生成速度を約1.5倍に、数時間で外部ツールへ
初日(10月5日)に出たのは、モデルの生成速度の底上げでした。既定のGPT-6 AstraとGPT-6.1 Solの出力速度が約5割上がり、サブスクリプション経由でおおむね毎秒30トークンから50トークン前後に改善したと報じられています。
これはモデル自体の差し替えではなく、基盤側の最適化によるものとされます。速度向上は『Sign in with ChatGPT』で連携する外部ツール(OpenCode、Pi、Amp、Devin など)にも、数時間のうちに波及したと伝えられています。
その後の日には、複数の小さな改善をまとめて出した日もあれば、改善が物足りないとして実際にリセットが配られた日もあった、と複数のメディアが報じています。日々の具体的な内容は観測者により記録が割れており、ここでは確認できた大枠にとどめます。
なぜ公開でノルマを切ったのか
背景には、利用枠をめぐる不満の高まりがあります。上限の削減や上位プランの実質的な縮小への批判が続き、ベンチマークで優位を見せたClaude Opus 5.5 など競合の存在も重なりました。
開発責任者が自らに締め切りを課し、進捗を毎日公開する——この手法は、停滞への不満に『見える形』で応える狙いがあると見られます。開発の優先順位を外部に約束する、一種の説明責任の演出とも言えます。
開発者・業務にとっての意味
Codexを日常的に使うチームには、短期的な実利があります。生成が速くなればエージェントの待ち時間が縮み、1日に回せる試行回数が増えます。改善が出ない日でもリセットで枠が戻るため、どちらに転んでも当座の損は小さい設計です。
一方で、毎日の更新は運用側に追従コストを生みます。挙動や上限が日替わりで変わりうるため、社内の手順やコスト見積もりを固定しづらくなる点には注意が要ります。
利便の裏にある懸念
この公約には批判もあります。利用上限のリセットを『ごほうび』として日々配る設計は、使用体験をギャンブルのように扱っているとの指摘が出ています。リセットは一時的な緩和であり、枠が足りないという構造的な問題そのものを解くわけではない、という見方です。
また、毎日必ず何かを出すという自己加圧的な開発は、品質や安定性の面でリスクを伴うとの懸念もあります。短い周期での出荷を優先するほど、検証に割ける時間は削られがちだからです。これらはいずれも『こうした懸念も指摘される』段階であり、28日を終えた時点での評価が待たれます。
参照: 28 days of Shipping at OpenAI(OpenAI Developer Community)、The New Stack、Nerdschalk、ExplainX


