本流を止めずに脇道で調べる──Cursor 3.11の「サイドチャット」が、走らせたままの相談を可能にした
Cursor 3.11が「サイドチャット」を追加。/side や /btw で、本流のエージェント作業を止めないまま文脈を引き継いだ相談を脇で始め、@で本流に引き戻せる。トランスクリプト検索の強化とあわせ、並列実行の次に来た細やかな分業を整理します。
SpaceX傘下のAIエディタ「Cursor」が、バージョン3.11で作業の進め方に効く小さな機能を足しました。走らせている本流の会話を止めないまま、その脇で別の相談を始められる「サイドチャット(side chats)」です。従来は「今の会話を中断して質問する」か「新しいタブを開いて文脈を失う」かの二択でしたが、その隙間を埋める選択肢が加わりました。
本流の文脈を引き継いだ「脇道の会話」
サイドチャットは、チャット欄で /side か /btw と打つか、上部のプラスボタンを押すと始まります。開いた会話はメインの文脈を引き継いだうえで、本流とは独立して動きます。使い捨てのメモではなく、後から続きを尋ねたり読み返したりできる、通常のエージェント会話と同じ「残る」対話です。
肝は、メインのエージェントが作業を続けている間もサイドチャットを回せる点です。既定では読み取り・検索・回答に振る舞いを寄せてあり、コードをいじる本流の作業を止めずに、脇で調べ物や確認だけを進められます。得た内容は @ で本流に引き戻し、文脈として合流させられます。
Cursorが挙げる主な使いどころは次の3つです。
- あいまいさの確認:仕様や前提が曖昧なとき、本流を止めずに脇で問い直す。
- 別案の下調べ:方針転換を確定させる前に、代替案だけを調べておく。
- 判断の検算:ある決定が妥当かを、作業を進めながら別口で点検する。
「どこで話したか」を後から手繰る検索
3.11では、過去のエージェント会話を探す検索も強くなりました。Agents Window では Cmd+K で会話の中身(トランスクリプト)まで含めて検索でき、名前やPR番号だけに頼らずに目当ての対話へ戻れます。Cursorは手元にローカルの検索インデックスを作り、数千件規模でも素早く引けるようにしたと説明しています。
個々の会話の中では Cmd+F で一致箇所を行き来でき、件数カウンタを見ながら長い履歴をたどれます。会話が資産として積み上がるほど、この「後から手繰れる」性質が効いてきます。あわせてプロジェクト/リポジトリの選択画面も作り直され、GitHub・GitLab・Azure DevOps の接続やブランチ選びを画面から離れずに済ませられるようになりました。
「並べて走らせる」の次に来た、細やかな分業
この半年、コーディングエージェントは「複数を並列で走らせる」方向へ揃ってきました。本ブログでも、1セッションに並行チャットを束ねたVS Code 1.128を取り上げています。サイドチャットはその延長にありつつ、力点が少し違います。もう1体のエージェントに別の実装を任せるのではなく、本流の1本を主役に据えたまま、その周りで軽い相談を回す――主従を分けた分業です。
実務では、待ち時間の使い方が変わります。エージェントが長い作業を進めている間、手を止めて眺めるのでなく、脇で次の一手を調べておける。読み取り中心を既定にしてあるぶん、相談が本流のコードを勝手に書き換える心配も小さく抑えられています。
一方で、便利さには注意も伴います。脇道の会話が増えれば、どの結論をどこで出したかが散らばり、文脈の管理が煩雑になりかねません。「残る対話」である以上、不要になったサイドチャットの整理や、本流へ何を引き戻すかの判断は、使い手側の作法として残ります。まずは一度、走らせているタスクの脇で /side を開き、確認や下調べだけを任せてみる。そこから、自分のワークフローに合う距離感を探るのがよいでしょう。
参照: Cursor Changelog(公式・v3.11) / Cursor Release Notes - Releasebot / Cursor Changelog(Gradually) / Cursor, Claude Code, and Codex are merging into one AI coding stack(The New Stack)