設定もMCPも「引っ越せる」──Codex 0.145の/importが、Cursor・Claude Codeの資産を丸ごと持ち込む
OpenAIのCodex 0.145.0が公開。/importがCursor・Claude CodeのMCPサーバや設定を丸ごと取り込めるようになり、乗り換えの壁が下がった。マルチエージェントV2も安定版へ。
コーディングエージェントを乗り換えるとき、最後まで足を引っ張るのは「これまで積み上げた設定」です。接続したMCPサーバ、入れたプラグイン、繰り返し使うコマンド、プロジェクトごとに覚えさせたメモ──これらを新しいツールで一から作り直すのは、想像以上に腰が重い作業です。OpenAIが7月21日に公開したCodex 0.145.0は、この「引っ越しの荷造り」を1コマンドに寄せてきました。
「荷物ごと」移ってこられる入り口
目玉は、既存の /import コマンドの対応範囲が広がったことです。これまでの取り込み先に加えて、Cursor と Claude Code の設定を取り込めるようになりました。移せるのは単なる好みの設定値だけではありません。エージェントの土台になる資産がまとめて対象です。
- MCPサーバ: 外部ツールやデータへの接続定義
- プラグイン: 拡張機能一式
- セッション: 過去のやり取り
- コマンド: 定型作業を呼び出すショートカット
- プロジェクト単位のメモリ: リポジトリごとに覚えさせた前提や約束事
要するに、Cursor や Claude Code で作り込んだ「自分専用の作業環境」を、ほぼそのままCodexに持ち込めるということです。乗り換えの障壁だった初期セットアップの手間が、大きく削られます。
「機能の差」より「相性とコスト」で選ぶ時代へ
この一手が効くのは、単なる利便性の話にとどまらないからです。設定の移植が容易になるほど、ツールを縛りつけていた乗り換えコスト(ロックイン)が薄くなります。開発者は「今の環境を捨てられないから使い続ける」のではなく、「今のタスクに合うから選ぶ」という判断に近づけます。
実際、Cursor のコミュニティでも、Claude Code・Codex・Cursor 間でセッションや履歴を相互に持ち運びたいという要望が挙がっていました。各社が同じ「エージェント型コーディング」の設計に収れんしつつある今、差別化の軸は生の機能から、価格・モデルの相性・既存資産との馴染みやすさへと移りつつあります。取り込み機能の拡充は、その競争にCodexが乗ったことの表れと読めます。
マルチエージェントが「実験」から「常用」へ
もう一つの節目は、任意参加だったマルチエージェントV2の安定版化です。今回の更新で、複数のサブエージェントを動かす仕組みが実運用に耐える形へ整えられました。具体的には、サブエージェントごとに使うモデル・推論の深さ・同時実行数を選べるようになり、役割の割り当てやエージェント間の行き来も扱いやすくなっています。
1つの大きなタスクを、調べる係・書く係・確かめる係へと切り分けて並走させる──そうした分業を、設定でコントロールしながら日常的に回せる土台が整った形です。安いモデルに下調べをさせ、要所だけ上位モデルに任せる、といったコスト設計も、モデルを個別に指定できることで現実的になります。
あわせて入った変更
- ページ分割された履歴(実験的): 過去スレッドの再開・検索・名前付け・サブエージェント対応・メモリを備え、長く使い続けても履歴を手繰りやすくする。
- Amazon Bedrock対応(実験的): Bedrockでのログインとカスタムエンドポイント/認証に対応し、既定モデルにGPT-5.6 Solを採用。自社のクラウド上でCodexを回す選択肢が広がる。
- 音声とリアルタイム対話: 音声の入力とツール出力(一般的なローカル音声形式に対応)、ストリーミングのリアルタイム対話V3を追加。
- ターミナルの改善: 逐次的なMarkdown描画で表示のもたつきを軽減し、安全に開ける可視化リンクをターミナル上に表示。
「丸ごと持ち込める」の裏側で点検したいこと
移行の手軽さは歓迎すべき進歩ですが、取り込む中身がMCPサーバやプラグインである点には注意が要ります。これらは外部への接続や実行権限を伴う仕組みで、「以前の環境で通っていたから」と無検証のまま持ち込めば、権限やサプライチェーン上の見落としもそのまま引き継ぐことになります。実際、偽のエラー報告や外部コンテンツ経由でエージェントを操ろうとする手口は、この半年でも繰り返し報告されてきました。移行時こそ、どのサーバに何を許可しているのかを棚卸しする好機と捉えるのが安全です。
また、乗り換えが容易になることは、裏を返せばツール間の競争と入れ替わりが激しくなることでもあります。利便性の裏で、チームとしてどの環境を標準に据えるかという意思決定は、むしろこれまで以上に必要になるとも指摘できます。まずは実験的機能の扱いに留意しつつ、移行は小さなプロジェクトで試し、取り込んだ設定の権限を一つずつ確認する──その一手間が、身軽さを安全な身軽さに変えます。
参照: Codex 0.145.0 リリースノート(GitHub) / Codex changelog(公式) / Codex Updates - Releasebot / Native Agent History Import(Cursor Community Forum)