AIへの指示書が「太りすぎ」を指摘される──Claude Code v2.1.206の/doctorが、CLAUDE.mdからコードで分かる記述を削らせる
2026年7月9日公開のClaude Code v2.1.206。/doctorがCLAUDE.mdから「コードを読めば分かる記述」を削るよう提案するようになった。worktree確認やMCP修正など、無人運用の足回りを固めた一手を読み解く。
2026年7月9日に公開された Claude Code v2.1.206 は、派手な新機能ではなく「無人で長く走らせる」現場の足回りを静かに固めるアップデートです。なかでも目を引くのが、設定診断コマンド /doctor に加わった一手──リポジトリに置いた CLAUDE.md のうち「コードを読めば分かること」を削るよう提案する、という機能です。AIに渡す指示書そのものを、AI側から「これは要らない」と指摘させる発想です。
指示書を厚くするほど良い、という思い込みへの反論
CLAUDE.md は、Claude Code がプロジェクトを扱う際に毎回読み込む常駐の指示書です。コーディング規約や運用ルールを書いておくと、エージェントの振る舞いを安定させられます。そのため「気づいたことを足していく」運用になりがちで、ファイルは放っておくと肥大化します。
v2.1.206 の /doctor は、この肥大に歯止めをかけます。チェックインされた CLAUDE.md を見て、Claude がコードベースから自力で導き出せる内容──たとえば「このディレクトリ構成」「使っているフレームワーク」「テストの置き場所」といった、ソースを見れば分かる記述──を削る候補として提案します。あわせて、以前からある「CLAUDE.md が長すぎます」という警告のしきい値も、モデルのコンテキストウィンドウの大きさに応じて調整されるようになりました。窓が広いモデルなら多少長くても許容し、狭いモデルでは早めに警告する、という理屈です。
なぜ削るのかというと、常駐の指示は毎ターン読み込まれ、その分だけトークンを消費するからです。コードを見れば分かることをわざわざ書いておくと、コストを払って重複した情報を運ぶだけでなく、コードとドキュメントがずれたときに古い記述がエージェントを誤誘導するリスクもあります。指示書は「コードから読み取れないこと(意図・制約・運用ルール)」に絞るほど効く、という考え方です。
このリリースが揃えた「任せて走らせる」ための足回り
v2.1.206 は CLAUDE.md の話だけではありません。エージェントに作業を委ね、長時間そのまま走らせる運用を想定した調整が並びます。主なものを整理します。
| 変更点 | 効果 |
|---|---|
EnterWorktree に確認を追加 | プロジェクトの .claude/worktrees/ 外の git worktree に入る前に確認を求める。想定外の作業場所への侵入を防ぐ |
/commit-push-pr の push 先を拡張 | origin に加え、リポジトリが設定した push 先(remote.pushDefault、または唯一のリモート)への git push を自動で許可 |
| バックグラウンドagentの即時更新 | Claude Code 本体の更新後、待機中のバックグラウンドagentを裏で新版へ上げる。次に開いたときの遅い更新待ちをなくす |
| MCP のタイムアウト修正 | --mcp-config や .mcp.json のサーバー別 request_timeout_ms が無視され、長い処理が既定60秒で切れていた不具合を修正 |
| OAuth 系 MCP の再認証 | トークン更新が一度失敗しただけで手動再認証を求められる問題を修正 |
いずれも「人が横で見ていない状態」で効くたぐいの改善です。worktree の確認は暴走時の被害範囲を狭め、push 先の自動許可はPR作成までの流れを止めずに通し、MCP まわりの修正は外部ツール連携が途中で沈黙するのを防ぎます。加えて /code-review の指摘品質が claude-opus-4-8 で改善され、agent一覧の表示(状態表示の幅やPRリンク)も細かく整えられました。
指示書の「引き算」をどう運用に取り込むか
実務では、次のような使い方が現実的です。
- 定期的に
/doctorを通す: 肥大したCLAUDE.mdを放置せず、削減候補を洗い出す。設定診断のついでに指示書の健康診断もできる。 - 「コードから読めること」は書かない、を原則にする: ディレクトリ構成やライブラリ名など、エージェントが探索で確認できる情報は指示書から外し、意図・禁止事項・運用ルールに集中させる。
- 削減はレビュー前提で受ける: 提案はあくまで候補であり、そのまま鵜呑みにしない。
3点目は特に重要です。「コードから導ける」という判定は万能ではありません。たとえば、あえて明文化している制約(「このAPIは非推奨なので使うな」など)は、コードを見ただけでは読み取りにくく、削るとエージェントが同じ失敗を繰り返す恐れがあります。利便性の裏で、意図的に書いた指示まで「冗長」と判断されて落ちるリスクは指摘できます。提案された削除候補は差分で確認し、意味のある指示は残す、という一手間は省かないほうが安全です。
指示書もコードと同じく「保守する対象」になった
今回の変更が示すのは、CLAUDE.md が「一度書いて放置するメモ」から、コードと同じく肥大や陳腐化を管理する対象へと位置づけが変わりつつある、という点です。エージェントに渡す文脈が増えるほどトークンコストと誤誘導の余地も増えるため、「何を書くか」だけでなく「何を書かないか」を設計する段階に入っています。無人運用を前提にした v2.1.206 の一連の調整は、その方向をはっきり指し示しています。
参照: Claude Code changelog(公式) / Releasebot: Claude Code updates / Claude Code Changelog (July 2026)