サブエージェントの“下働き”が10分の1の値段になった──Claude Haiku 5.5が、Terminal-Benchで「0点」から39%へ跳ね、Claude Codeの既定Haikuに座った
Anthropicが小型モデルの新版Claude Haiku 5.5を公開。価格は前世代の約10分の1、1Mトークン文脈に拡大し、エージェント型コーディングのTerminal-Benchは0%から39.2%へ。Claude Codeの既定Haikuにも採用され、サブエージェントの“下働き”を安く速くさばく役回りに収まります。
Anthropic は2026年10月7日、小型モデルの新版「Claude Haiku 5.5」を公開しました。あわせて Claude Code v2.1.293 が、このモデルを既定の Haiku(モデルID claude-haiku-5-5)に切り替えています。小型・高速・低価格という Haiku の立ち位置はそのままに、エージェント作業の実力を大きく引き上げたのが今回の要点です。
10分の1に近づいた値札
価格はプロンプト長で二段階に分かれます。10万トークンまでの通常帯では、前世代 Haiku 4.5 の「入力$1/出力$5」から大きく下がりました。コンテキスト上限は20万トークンから100万トークンへ拡大し、最大出力は12万8千トークンです。
| プロンプト長 | 入力(100万トークンあたり) | 出力(100万トークンあたり) |
|---|---|---|
| 10万トークン以下 | $0.10 | $0.50 |
| 10万トークン超 | $0.50 | $2.50 |
キャッシュ読み出しは$0.01/$0.05、キャッシュ書き込みは$0.125/$0.625(いずれも通常帯/拡張帯)です。Anthropic の説明では、平均で Haiku 4.5 より約75%安く、10万トークン未満の用途では最大90%の削減になるとされています。
ベンチマーク:「0点」からの跳躍
注目は、小型モデルが苦手としてきたエージェント系タスクの伸びです。前世代との差を数値で並べます。
- Terminal-Bench 4.0(エージェント型コーディング):39.2%(Haiku 4.5 は0%)
- OSWorld 2.1(コンピュータ操作):72.4%(同15.7%)
- GDPval-AA v2.1(知識):1,620(同735)
ターミナル上でコマンドを打って作業を進める能力は、前世代が事実上通用しなかった水準から、一定の仕事をこなせる領域に入りました。画面を見て操作する「コンピュータ操作」も大幅に改善しています。
どこで効くか──主役ではなく「下働き」
Anthropic はこのモデルを「範囲の狭いタスク」に最適と位置づけています。具体的には次のような使い方です。
- 長い会話を畳むコンパクション(要約圧縮)
- 検索結果やログの要約
- 親エージェントが切り出すサブエージェントの実行
一方で、複雑なエージェント型コーディングそのものには Sonnet 5.5 や Opus 5.5 のほうが向く、とも明言しています。つまり Haiku 5.5 は、推論の主役を張るモデルではなく、主役が大量に投げる「下請け仕事」を安く速くさばく役回りです。
ワークフローとビジネスへの影響
この性格は、いま各ツールが進めている「1人の指示役+複数のサブエージェント」という構成と噛み合います。Claude Code は直前の v2.1.292 で、サブエージェントの作業の“力の入れ具合”を指定する effort パラメータを追加していました。軽い下働きには Haiku 5.5 を低コストで割り当て、込み入った設計や修正だけ上位モデルに回す、という使い分けがしやすくなります。
経営目線では、エージェントの常時稼働にかかる費用の構造が変わります。要約・分類・前処理といった反復作業の単価が下がれば、これまで費用対効果で見送っていた自動化を回しやすくなります。1Mトークンの文脈も、大きめのリポジトリやログをまとめて読ませる前処理に向きます。提供先は Anthropic API に加え、AWS・Google Cloud・Microsoft Azure です。
安さが呼び込む落とし穴
単価の低下は、そのまま総額の低下を意味しません。1回が安いほどループやサブエージェントを気前よく増やしがちで、結果として呼び出し回数が膨らみ、総支払額や計算資源の消費がかえって増える懸念も指摘されます。回しっぱなしの無人運用では、費用の“見える化”と上限設定を先に用意しておくのが無難です。
品質面でも、Anthropic 自身が「複雑なコーディングは上位モデルが向く」と線を引いています。安いからと下働き用モデルに重い判断まで任せると、手戻りが増えて結局は高くつく場面もあり得ます。モデルの使い分けは、価格表だけでなくタスクの難度で決めるのが現実的です。
参照: Claude Code changelog(v2.1.293) / The Decoder: Claude Haiku 5.5 / MarkTechPost: Claude Haiku 5.5 / LLM-Stats: Claude Haiku 5.5


